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確定申告はなぜ3月15日まで?——「年」と「年度」の深い関係

確定申告はなぜ3月15日まで?——「年」と「年度」の深い関係

【読了時間:約12分 / 要約のみなら3分】

この記事で分かること(3行まとめ)

  • 確定申告の期限は1月→2月→3月と延長されてきた
  • 日本の会計年度(4月始まり)は明治政府の財政対策が発端
  • コロナ禍の4月延長は「一時的措置」で、現在は3月15日に戻っている

毎年2月になると、「確定申告」という言葉を目にする機会が増えます。

期限は3月15日。でも、なぜ3月15日なのでしょうか?

「年度末だから」と思いがちですが、実は確定申告の対象は1月1日〜12月31日の所得。「年度」ではなく「年」単位なのです。

この記事では、確定申告の期限が3月15日になった歴史と、「年」と「年度」の違いを深掘りしてみました。


結論:期限は1月→2月→3月と延長されてきた

確定申告の期限は、最初から3月15日だったわけではありません。

期限背景
昭和22年(1947年)1月31日申告納税制度の導入
昭和26年(1951年)2月末日延長
昭和27年(1952年)〜3月15日現在まで継続

つまり、70年以上も3月15日が続いているのです。


【歴史】申告納税制度はGHQの影響で始まった

戦前は「賦課課税」だった

戦前の日本では、所得税は賦課課税制度で徴収されていました。

これは「前年の実績をもとに、役所が税額を決める」という仕組み。納税者が自分で申告するのではなく、お上が決めるスタイルです。

戦後、アメリカ式の「申告納税」へ

昭和22年(1947年)、GHQの影響下で税制改革が行われ、申告納税制度が導入されました。

「自分で所得を計算し、自分で申告する」——これは戦後の民主主義に適合する制度として位置づけられたのです。

期限が延長された理由

最初の期限は1月31日。でも、これでは年末年始を挟んで準備期間が短すぎました。

そこで昭和26年に2月末日に延長され、翌年の昭和27年から3月15日に。この期限が現在まで続いています。

なお、「なぜ3月末日ではなく15日なのか」という詳細な理由については、明確な史料が見つかっていません。年度末の繁忙期を避けるため、あるいは税務署の処理期間を確保するためという推測はありますが、定説とは言えない状況です。


【比較】「年」と「年度」は何が違う?

ここで混乱しやすいのが、「年」と「年度」の違いです。

区分期間使われる場面
1月1日〜12月31日確定申告、個人の所得
年度4月1日〜3月31日会計年度、学校、官公庁

確定申告の対象は「年」(1〜12月)の所得ですが、申告期限は「年度」の終わり(3月)に近い。このズレが「なぜ3月?」という疑問を生むのかもしれません。


【深掘り】日本の会計年度はなぜ4月始まり?

【時間がない方へ】 基本編はここまで。要点だけ知りたい方は「まとめ」へどうぞ。以下の深掘り編は、時間のある時にじっくりお読みください。

確定申告の話から少し脱線しますが、「なぜ日本は4月始まりなのか」も面白いテーマです。

会計年度の変遷

始まり理由
明治2年(1869年)10月制度化当初
明治6年(1873年)1月西暦採用に合わせる
明治8年(1875年)7月地租の納期に合わせる
明治19年(1886年)〜4月財政赤字対策

なんと、4回も変わっているのです。

松方正義の「帳尻合わせ」

4月始まりになった理由には、当時の大蔵卿・松方正義の財政政策が関係しています。

明治17年頃、日本は軍事費の増大で財政が悪化していました。松方は赤字を削減するため、会計年度を7月始まりから4月始まりに変更しました。

これにより、明治18年度は7月〜翌年3月の9ヶ月間に短縮。予算の辻褄を合わせると同時に、見かけ上の赤字も削減できたのです。

イギリスの影響?——諸説あり

もう一つの説として、イギリスの影響が挙げられることがあります。

イギリスの会計年度は4月〜3月(政府)で、日本と同じ。当時世界一の経済大国だったイギリスに倣ったという説です。

ただし、直接的な因果関係を示す史料は確認されていません。松方正義の財政政策がきっかけだったことは史料で裏付けられていますが、「イギリスを参考にした」という点は推測の域を出ていないのが現状です。

学校が4月入学になった経緯

学校の4月入学についても触れておきます。

明治5年(1872年)の「学制」公布時は、欧米を参考に9月入学でした。その後、会計年度が4月始まりに統一された後、学校も徐々に4月入学へ移行していきました。

両者の関連性は指摘されていますが、学校が会計年度に「合わせた」と断定できる史料は限られています。徴兵制度との関係など、複数の要因が絡み合っていたようです。


【深掘り】イギリスの「4月6日」の謎

イギリスの個人の課税年度は、実は4月6日〜翌4月5日という不思議な日付です。

なぜこんな中途半端な日付なのでしょうか?

Lady Dayと暦のズレ

答えはグレゴリオ暦への改暦にあります。

中世イギリスでは、**3月25日(Lady Day=聖母マリア受胎告知の祝日)**が年の始まりでした。これが課税年度の始まりにもなっていたのです。

ところが1752年、イギリスはユリウス暦からグレゴリオ暦に改暦。この時、**11日間が「消えた」**のです(9月3日の翌日が9月14日になった)。

財政への影響を避けるため

11日間が消えると、その年の課税年度が11日短くなってしまいます。これでは国家財政に影響が出る。

そこでイギリス政府は、課税年度の開始日を11日後ろにずらすことで、1年365日を維持しました。

3月25日 + 11日 = 4月5日

さらに1800年(閏年の扱いの違いで1日ズレが発生)を経て、現在の4月6日になったのです。


【比較】世界の確定申告期限

日本の3月15日は、世界的に見るとどうなのでしょうか?

課税年度申告期限備考
日本1月〜12月3月15日
アメリカ1月〜12月4月15日延長申請で10月15日まで可
イギリス4月6日〜翌4月5日1月31日オンライン申告の場合
ドイツ1月〜12月7月31日税理士依頼時は翌々年2月末
フランス1月〜12月5月〜6月初旬地域により異なる
韓国1月〜12月5月31日

日本の3月15日は、先進国の中では比較的早い部類です。

アメリカの4月15日は「Tax Day」として有名。延長申請をすれば10月15日まで延ばせるのも特徴的です。

4月始まりは世界的に少数派

ちなみに、会計年度が4月始まりの国は世界的に少数派です。

  • 4月〜3月: 日本、イギリス、カナダ、インド、南アフリカ
  • 1月〜12月: フランス、ドイツ、中国、ロシア、スペインなど多数
  • 10月〜9月: アメリカ(連邦政府)
  • 7月〜6月: オーストラリア、ニュージーランド

「4月始まり」は日本の常識ですが、世界の非常識でもあるのです。


【コラム】コロナ禍の「4月延長」は定着しなかった

2020年から始まったコロナ禍では、確定申告の期限が延長されました。

対象年度提出年本来の期限延長後措置
令和元年分2020年3月16日4月16日全国一律延長
令和2年分2021年3月15日4月15日全国一律延長
令和3年分2022年3月15日個別申請で4月15日簡易延長方式
令和4年分以降2023年〜3月15日延長なし通常に戻る

「コロナで延長されてからそのまま」と思っている人もいるかもしれませんが、実は令和4年分(2023年提出)から通常の3月15日に戻っています

一律延長は「一時的措置」だったのです。


まとめ:3月15日には歴史がある

確定申告の期限が3月15日である理由を振り返ると:

  • 1947年: 申告納税制度の導入(期限は1月31日)
  • 1951年: 2月末日に延長
  • 1952年〜: 3月15日に延長(現在まで継続)

また、日本の「4月始まり」には:

  • 明治政府の財政対策(松方正義の帳尻合わせ)
  • イギリスの影響という説もあるが、直接的な史料は限られる

という歴史がありました。

コロナ禍で4月延長が続いた時期もありましたが、現在は3月15日に戻っています

確定申告の期限を「年度末だから」と思っていた方は、「年」と「年度」の違いを意識してみると、また違った見え方がするかもしれません。


参考情報

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