📝 やってみた 更新: 2026年2月3日 15分

技術書典に初出展してみた

技術書典に初出展してみた

【読了時間:約15分 / 要約のみなら3分】

この記事で分かること(3行まとめ)

  • 技術同人誌は「企画→執筆→入稿→当日」の4ステップで作れる
  • 本の構成には「大扉・目次・本文・奥付」などのルールがある
  • 最初の1冊は「文章を書くこと」に集中したほうがいい

技術書典や技書博に「サークル参加してみたい」と思ったことはありませんか?

私は2023年の技術書典14で初めてサークル参加しました。「LINE BOTではじめる!「居心地の良い」コミュニケーションの実践」という本を出して、なんとか完売。

でも、振り返ると反省点だらけです。

この記事では、初めて技術同人誌を作る人に向けて、全体の流れと「最初に知っておきたかったこと」を共有します。


結論:文章書けるほうが大事

先に結論を言います。

レイアウトより先に文章を書け

私が犯した最大の失敗は、「こういうページを作りたい」という見た目のイメージが先行して、文章を書く前にレイアウトのカスタマイズに時間を費やしたことでした。

  • LINEのチャット風の吹き出しを再現したい
  • 画像を自由に配置したい
  • フォントをカッコよくしたい

どれも実現できます。でも、ツールの知識がない状態でこれをやると、文章を1行も書かないまま数日が過ぎます

技術書の価値は「内容」です。見た目は後からいくらでも調整できます。


【全体像】技術同人誌制作の4ステップ

技術同人誌を作る流れは、大きく4つのステップに分かれます。

ステップ時期やること
1. 企画イベント2〜3ヶ月前テーマ決め、ツール選び、サークル申込
2. 執筆イベント1〜2ヶ月前本文執筆、図や画像の作成、校正
3. 入稿イベント2〜3週間前PDF生成、表紙作成、印刷所に入稿
4. 当日イベント当日設営、頒布、撤収

以下、それぞれのステップで「最初に知っておきたかったこと」を詳しく解説します。


【STEP1:企画】テーマとツールを決める

テーマの決め方

技術同人誌のテーマは、自分が詳しいこと・書きたいことから選びましょう。

よくあるテーマ例:

  • 業務で使っている技術の入門書
  • 個人開発したサービスの解説
  • 特定の技術を深掘りした本
  • 失敗談・ハマりポイント集

「誰に読んでほしいか」を決めておくと、書く内容がブレにくくなります。

サークル参加の申し込み

技術書典のサークル参加は、公式サイトから申し込みます。

費用の目安:

  • サークル参加費:無料〜8,000円前後(イベントによる)

※技術書典は、オンライン・オフライン開催ともに無料(技術書典16以降

ツール選び:何で書くか?

技術書を書くツールはいくつかあります。

ツールメリットデメリットおすすめ度
Word/Pages直感的、すぐ使えるバージョン管理が難しい★★☆
Googleドキュメント共同編集が楽印刷用PDFの調整が面倒★★☆
Notion書きやすいPDF出力の品質に限界★☆☆
Markdown+Pandocシンプル書籍向けレイアウトは自作★★☆
Re:VIEWGit管理可能、技術書向け学習コストあり★★★
Re:VIEW+VivliostyleCSS組版、自由度高い学習コスト高い★☆☆

私の失敗:凝りすぎた

私は「GitでPDFを管理したい」という理由でRe:VIEW + Vivliostyleを選びました。

結果、LINEチャット風レイアウトを再現しようとして1235行のCSSを書き、環境構築とレイアウト調整に時間を溶かしました。

詳しくは別記事「Re:VIEW + Vivliostyleで本を作ってみた」に書いています。

おすすめ:最初の1冊はシンプルに

最初の1冊は、使い慣れたツールで書くのがおすすめです。

  • 普段からWord使ってる → Word
  • エンジニアでGit使いたい → Re:VIEW(LaTeX出力)
  • とにかく早く書きたい → Googleドキュメント

凝ったレイアウトは2冊目以降で挑戦すればいいのです。


【STEP2:執筆】本の構成と書き方

本の構成要素

本には「構成のルール」があります。初めて作るときに戸惑うポイントです。

部分説明
表紙(表1)本の顔。タイトル、著者名
表紙裏(表2)通常は白紙
大扉タイトルページ。本文の最初
目次章立ての一覧
はじめに前書き、本書の説明
本文第1章、第2章…
あとがき後書き、謝辞
奥付発行情報(著者、発行日、印刷所)
裏表紙裏(表3)通常は白紙
裏表紙(表4)広告や価格を入れることも

大扉(タイトルページ)

本文の最初のページ。表紙と同じタイトル・著者名を記載します。

同人誌では省略することもありますが、あると「ちゃんとした本」感が出ます。

奥付(おくづけ)

本の最後に入れる「発行情報」のページ。

──────────────────────────
QRコードを編む 実践編
──────────────────────────
2024年5月12日 初版発行

著者:megusunu
発行:megusunuLab
印刷:ねこのしっぽ

本書の内容に関するお問い合わせは
X: @megusunu
──────────────────────────

奥付は必須です。連絡先を書いておくと、誤植の報告や感想をもらえることがあります。

ページ番号(ノンブル)の振り方

ページ番号の振り方にはルールがあります。

部分ページ番号備考
表紙なし数えない
大扉1(または振らない)本文開始
目次i, ii, iii…(ローマ数字)前付
本文1, 2, 3…(アラビア数字)章の開始でリセットも可
奥付なし or 通し番号最後のページ

同人誌では厳密に守らなくても大丈夫ですが、知っておくと便利です。

執筆のコツ

最初の2週間は文章だけ書くと決めておくのがおすすめです。

  • レイアウトは後回し
  • 図や画像も後から差し込める
  • まず「伝えたいこと」を全部書き出す

完璧を目指さず、まず「書き切る」ことを優先しましょう。


【STEP3:入稿】印刷所への入稿

紙の本を作るなら、印刷所への入稿が必要です。

印刷所の選び方

技術書同人誌でよく使われる印刷所:

印刷所特徴URL
日光企画技術書典のバックアップ印刷所。初心者にも丁寧な対応nikko-pc.com
ねこのしっぽ表紙テンプレートが充実。100ページ超の技術書にも対応shippo.co.jp
栄光フルカラー本に強いeikou.com

部数の決め方

初めての場合、部数は悩みどころです。

目安:被チェック数 × 1.5〜2倍

技術書典では「被チェック数」(お気に入り登録数)が事前にわかります。経験則として、被チェック数の1.5〜2倍くらいが実際の頒布数になることが多いです。

被チェック数印刷部数の目安
10〜2030〜50部
30〜5050〜100部
50以上100部以上

※あくまで目安です。テーマや価格によっても変わります。

価格設定の考え方

技術同人誌の価格は、500円〜1,500円が多いです。

価格設定の目安:

  • ページ数 × 10〜15円 + 利益
  • 印刷費 ÷ 想定頒布数 + 利益

例:50ページの本、100部印刷(印刷費3万円)の場合

  • 印刷費300円/部 + 利益200円 = 500円
  • または、内容に自信があれば 1,000円 でもOK

技術書典では1,000円が主流です。500円刻みの価格(500円、1,000円など)だとお釣りが楽です。

【Tips】物理本+電子版のセット販売がおすすめ

オフライン会場では、物理本+電子版のセットを用意しておくと購入されやすいです。

販売形態価格例
電子版のみ500円
物理本のみ500円
セット(少しお得)800円

「どうせなら両方欲しい」という方が多く、単品よりセットのほうがよく売れました

セット価格は「単品合計より100〜200円お得」くらいが目安です。

入稿前のチェックリスト

  • ページ数:4の倍数か(無線綴じ)、偶数か(中綴じ)
  • 塗り足し:3mmの余白があるか
  • フォント:埋め込まれているか
  • 表紙サイズ:印刷所の仕様に合っているか
  • 解像度:350dpi以上か(印刷用)
  • ノンブル:全ページにページ番号があるか

早割を使おう

印刷所には「早割」という割引があります。入稿が早いほど安くなるので、スケジュールに余裕を持ちましょう。

間に合わなくても諦めない

実は私、最初の印刷は間に合いませんでした。

結局、家で印刷して「コピー本」を作りました

表紙まで気が回らず、白黒の文字だけのシンプルなデザインに。でも、写真印刷用の光沢ゴールドの上質紙で印刷したら、シンプルだけど目立って、手に取ってくれる人がいました。

諦めずに頒布する。これが大事です。

締め切りに間に合わないときの選択肢

印刷所の締め切りを逃しても、方法はあります。

方法メリットデメリット
コピー本(家で印刷)無料、すぐできる品質に限界
キンコーズ品質が良い少し高い
ACCEA24時間営業の店舗あり、品質良い少し高い

数日あるなら、キンコーズやACCEAで印刷するのもアリです。ACCEAは一部店舗が24時間営業なので、前日深夜でも駆け込める場合があります。事前に店舗一覧で営業時間を確認しましょう。


【STEP4:当日】即売会で売るためのコツ

お品書きを作ろう

お品書きとは、頒布物の一覧表のこと。タイトル、価格、簡単な説明を書いておくと、お客さんが立ち寄りやすくなります。

A4サイズで作って、スペースに立てておきましょう。

100均グッズを活用しよう

即売会のスペースは机が平面なので、立体的に見せる工夫が必要です。

100均で揃えられるもの:

  • ブックスタンド:本を立てて表紙を見せる
  • イーゼル:お品書きを立てる
  • テーブルクロス:スペースを華やかに
  • コイントレー:お釣りの受け渡しに

人が通ったときに遠くから見えるようにするのがポイント。立てて展示するだけで、目に留まりやすくなります。

お釣りの準備

技術書典には「かんたん後払い」というシステムがあり、多くの方がこれで支払います。なので、お釣りをそこまで頑張って用意しなくても大丈夫。

とはいえ、現金払いの方もいるので、1万円を2回連続で出されても返せるくらいは持っておきましょう。

  • 1000円札:10枚くらい
  • 500円玉:10枚くらい
  • 100円玉:20枚くらい

【おすすめ】Square端末でキャッシュレス対応

余裕があれば、Squareの契約をおすすめします。

  • PayPayを含むほとんどのキャッシュレス決済に対応
  • クレジットカードのタッチ決済だけならスマホだけでOK(端末不要)
  • 手数料は2.5%〜(年間キャッシュレス決済額3,000万円未満の中小企業の場合)

電子マネーで払う方も多いので、5,000円弱の投資ができるならSquare端末の購入もアリです。技術書典以外の即売会でも使えます。

※手数料の詳細はSquare公式サイトで確認してください。

当日の持ち物チェックリスト

  • (在庫)
  • 見本誌(立ち読み用)
  • お品書き
  • ポスター(あれば)
  • お釣り
  • 決済端末(Squareなど)
  • 筆記用具
  • ガムテープ・養生テープ
  • ゴミ袋
  • 飲み物・軽食

イベント終了後すぐやること

イベントが終わったら、記憶が新しいうちに以下をやっておきましょう。

  1. 在庫を数える:何部売れたか記録。次回の部数決めに役立ちます
  2. SNSで報告:「ありがとうございました!」の投稿。電子版の告知も一緒に
  3. 感想をメモ:「こうすればよかった」を忘れないうちに書き留める

帰りの電車でスマホにメモするだけでOKです。


【イベント後】電子版の販売

イベント後も、電子版を販売することで継続的に読者に届けられます。

電子版の販売プラットフォーム

プラットフォーム特徴
技術書典オンラインマーケットイベント後も継続販売可能
BOOTHpixivアカウントで無料開設。手数料5.6%+45円
Zenn技術書に特化。Markdownで執筆可能
note記事形式でも販売可能

紙の本が売り切れても、電子版があれば「在庫切れ」になりません。


【教訓】最初の1冊で学んだこと

技術書典14に初出展して、いくつかの教訓を得ました。

1. 文章を書く時間を確保する

レイアウトや環境構築に時間を取られると、肝心の文章を書く時間がなくなります。

最初の2週間は文章だけ書くと決めておくのがおすすめです。

2. 完璧を目指さない

初めての本は、完璧じゃなくていい。

  • 誤字脱字があっても、正誤表を出せばいい
  • レイアウトが地味でも、内容が伝わればいい
  • ページ数が少なくても、1冊出せたことが大事

3. 間に合わなくても諦めない

印刷が間に合わなくても、コピー本という選択肢があります。

諦めずに頒布する。これが大事です。

4. 次回に向けてメモを残す

イベント中に気づいたことは、その場でメモしておきましょう。

  • 「この説明、伝わりにくかったな」
  • 「この価格設定で良かった」
  • 「お釣りが足りなくなりそうだった」

次回の改善につながります。


よくある質問

Q. 技術同人誌を書くツールは何がおすすめ?

A. 初めての1冊は使い慣れたツールがおすすめです。 普段Wordを使っているならWord、GitでPDFを管理したいならRe:VIEW + LaTeX、とにかく早く書きたいならGoogleドキュメントが良いでしょう。凝ったレイアウトは2冊目以降で挑戦しましょう。

Q. 何部刷ればいい?

A. 技術書典の場合、被チェック数(お気に入り登録数)の1.5〜2倍が目安です。 被チェック10〜20なら30〜50部、30〜50なら50〜100部程度。初めてなら少なめに刷って、売り切れたら電子版に誘導するのも手です。

Q. 印刷の締め切りに間に合わない場合は?

A. 諦めないでください。 家で印刷してコピー本を作る、キンコーズやACCEA(一部24時間営業)で印刷するなどの選択肢があります。コピー本でも、光沢紙を使うなど工夫すれば手に取ってもらえます。

Q. 技術同人誌の価格はいくらが妥当?

A. 500円〜1,500円が一般的で、技術書典では1,000円が主流です。 ページ数×10〜15円+利益、または印刷費÷想定頒布数+利益で計算できます。500円刻みの価格だとお釣りが楽です。


まとめ:まず1冊作ってみよう

技術同人誌を作るのは、想像以上に大変です。

でも、自分の知識を本にまとめて、誰かの手に届けるのは、とても楽しい経験です。

最初の1冊は、完璧じゃなくていい。まず作ってみる。

それが一番の学びになります。


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