🔍 深掘り! 12分

「久寿川」はなぜ縁起の良い名前になったのか?

「久寿川」はなぜ縁起の良い名前になったのか?

【読了時間:約12分 / 要約のみなら3分】

この記事で分かること(3行まとめ)

  • 久寿川は昭和13年(1938年)に「縁起直し」で改名された
  • 今津郷は日本酒生産量日本一「灘五郷」の一角
  • 西宮市は「住みたい自治体ランキング」上位常連の人気エリア

日本には、縁起の悪い名前を良い漢字に置き換える「縁起直し」という文化があります。

大阪の「梅田」が元は湿地帯を意味する「埋田」だったように、兵庫県西宮市を流れる「久寿川」にも、知られざる改名の歴史がありました。


結論:昭和13年、縁起の良い「久寿」へ改名された

久寿川は、1938年(昭和13年)に現在の名前に改められました。

「久寿」という漢字には「長く寿(ことぶき)を」という願いが込められています。改名に伴い、周辺の町名も「今津久寿川町」となりました。

では、なぜ改名が必要だったのでしょうか?


【歴史】改名前の久寿川

久寿川はかつて、肥料を運ぶ小舟が行き来する川でした。

当時の農業では、人や家畜の排泄物を肥料として活用するのが一般的。久寿川もそうした「肥やし」を運ぶ水路として使われていたのです。

そのため、川の名前もその用途を直接的に表す**「糞川(くそかわ)」**と呼ばれていました。

昭和に入り、地域の発展とともに「もっと良い名前を」という機運が高まります。そして1938年、「久寿川」という縁起の良い名前に生まれ変わったのです。

ちなみに、阪神電鉄の「久寿川駅」が誕生したのは1926年(大正15年)。川の改名より12年も早いのです。

駅名が先だった理由

1926年12月、阪急今津線が阪神本線まで延伸し、両社の接続駅として新しい「今津駅」が設置されました。そのため、元々あった阪神の「今津駅」は駅名の重複を避ける必要が生じ、近くを流れる川の名前を取って「久寿川駅」に改称されたのです。

ここで謎が生じます。

  • 川が「久寿川」に公式改名されたのは 1938年
  • 駅が「久寿川駅」になったのは 1926年

つまり、1926年時点で川は公式には別の名前だったはず。にもかかわらず、駅名には「久寿川」が採用されています。

考えられる説としては:

  1. 通称として「久寿川」が既に使われていた(公式改名が後追い)
  2. 駅名が先に縁起の良い名前を採用し、川の改名を後押しした

いずれにせよ、駅名が先に「長寿を願う名前」を採用し、12年後に川と町名が追いついた——という流れは興味深いですね。


【比較】日本各地の「縁起直し」地名

久寿川のような改名は、日本各地で見られます。

現在の地名元の名前改名の理由
梅田(大阪)埋田湿地帯を埋め立てた土地
大阪大坂「坂」は「土に返る」を連想
久寿川(西宮)糞川縁起の良い漢字へ

特に奈良時代の和銅6年(713年) には、「郡郷名を好字(縁起の良い字)で著せ」という命令が出され、全国的に地名の「美化」が行われました。

久寿川の改名は昭和ですが、この「縁起直し」の文化は1300年以上続いているのです。


【深掘り】今津郷と灘五郷——日本酒の聖地

【時間がない方へ】 基本編はここまで。要点だけ知りたい方は「まとめ」へどうぞ。以下の深掘り編は、時間のある時にじっくりお読みください。

久寿川が流れる今津エリアは、実は日本酒の名産地「灘五郷」の一角です。

灘五郷とは?

灘五郷(なだごごう)は、兵庫県の灘地域にある5つの酒造地の総称です。

郷名所在地
今津郷西宮市
西宮郷西宮市
魚崎郷神戸市東灘区
御影郷神戸市東灘区
西郷神戸市灘区

東西12kmに及ぶこのエリアは、国内の日本酒生産量の約25% を占める日本最大の清酒酒造地帯です。

なぜ灘が日本酒の名産地に?

灘五郷が発展した理由は、大きく3つあります。

1. 宮水(みやみず)の発見

天保年間(1837〜1840年頃)、櫻正宗の六代目蔵元・山邑太左衛門が、西宮の井戸水が酒造りに最適であることを発見しました。この「宮水」は、ミネラルバランスに優れ、辛口で切れの良い酒を生み出します。

2. 六甲おろし

六甲山から吹き下ろす冷たい風「六甲おろし」が、酒造りに適した低温環境を作り出しました。

3. 江戸への輸送

西宮には「樽廻船」の積出港があり、江戸へ酒を運ぶ海運ルートが確立されていました。「下り酒」として江戸で人気を博したのです。

久寿川が流れる「今津郷」

灘五郷のうち、久寿川が流れるのは最も東に位置する今津郷です。

今津郷を代表する酒蔵が大関。1711年(正徳元年)創業、310年以上の歴史を持ちます。「ワンカップ大関」の発祥地としても有名です。

今津郷のおすすめスポット

甘辛の関寿庵(大関のアンテナショップ)

酒蔵通り沿いにある大関直営のショップ。生原酒の量り売りや、酒カステラ・酒饅頭などの酒スイーツが楽しめます。試飲販売機では1杯100円で飲み比べも可能。

実は店名の「寿」は、久寿川から取られているそうです。地名と酒蔵が繋がっているのは面白いですね。

今津灯台

1810年、大関創業家の5代目・長部長兵衛が私費で建てた灯台。現役として機能する日本最古の灯台で、西宮市指定重要有形文化財にもなっています。

なお、2024年には建設から215年で初めての移設工事が行われました。防潮堤の整備に伴うもので、元の場所から約20m移動しています。

近隣の西宮郷

今津郷の西側には西宮郷があり、白鹿(辰馬本家酒造)、日本盛、白鷹などの酒蔵が集まっています。酒ミュージアムや白鹿クラシックスなど、見学・試飲施設も充実しています。


【現在】西宮市の住みやすさ

久寿川がある西宮市は、「住みたい自治体ランキング」で上位常連(いい部屋ネット調べ、関西版)の人気エリアです。

交通アクセス

西宮市内には3つの鉄道路線が走っています。

路線主要駅備考
JR神戸線西宮駅快速・新快速停車
阪急神戸本線西宮北口駅特急停車
阪神本線西宮駅・甲子園駅特急停車

大阪にも神戸にも30分以内でアクセスでき、「阪神間のまんなか」という立地です。

※ 久寿川駅は甲子園駅の隣(各停のみ停車)。

子育て環境

  • 子育てコンシェルジュ制度
  • 中学校の完全給食
  • 医療費助成の充実
  • 公園が多く、緑豊かな環境

地域コミュニティ

今津地区は、西宮市の中でも最も早く福祉会が作られた地域として知られています。

北久寿川、中久寿川、南久寿川など16の単位福祉会が連携し、「安全安心で明るく住みよいまちづくり」を続けてきました。


まとめ

久寿川の歴史を振り返ると、日本人の「言葉の力」への信仰が見えてきます。

  • 昭和13年、縁起の良い「久寿」へ改名
  • 灘五郷・今津郷の一角として、日本酒文化を支える
  • 住みたい自治体ランキング上位の人気エリア

地名は変わっても、土地の良さは変わらない。

「長寿を願う名前」が、結果的に似合う街になったのかもしれません。

そして今、その「久寿」の字は、酒蔵のアンテナショップ「甘辛の関寿庵」にも受け継がれています。


参考情報

訪れたい場所

今津郷エリア(久寿川駅周辺)

  • 甘辛の関寿庵:大関直営のアンテナショップ。酒スイーツと試飲が楽しめる
  • 今津灯台:日本最古の現役灯台(西宮市指定重要有形文化財)

西宮郷エリア(西宮駅周辺)

  • 白鹿クラシックス:酒蔵直営のショップ&レストラン
  • 酒ミュージアム:日本酒の歴史を学べる博物館

参考URL

共有:

📚関連記事